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12月10日付
30年前、風船が運んだ縁
テノール歌手大西貴浩さん 本宮でコンサート

 田辺市本宮町の市立本宮中学校(生徒73人)で8日、東京在住のテノール歌手・大西貴浩さん(37)のミニコンサートが開かれた。

 大西さんは香川県出身で小学1年生の時「風船のたび」というダンスをクラスメートと踊り、「ふうせんのたびがげんきいっぱいおどれますように。おたよりください」と書いた手紙付きの風船を空に飛ばした。風船は香川から紀伊水道を渡り、約200キロ離れた本宮町で発見され、近くの郵便局長だった羽根益次郎さん(67)の手に渡った。羽根さんは「君がとばした風船は、私達の町の山の木に、ひっかかりました。山林業の寺坂さんという方が取って来てくれました」と返信した。

 神社仏閣が大好きという大西さんは今年、父親の退職を機に熊野への家族旅行を思い立ち、インターネットで羽根さんの名前を探し、地元新聞での紹介記事を発見。新聞社を介し羽根さんと30年ぶりに連絡がとれ、今年9月、東京で大西さんが出演したコンサートに羽根さんが駆け付け、初の対面を果たした。その後、熊野本宮大社での奉納公演が決定。羽根さんはこの機に地元中学生にもプロの歌を聞かせてほしいと申し出た。

 ミニコンサートは大岡恵教諭がピアノ伴奏し、大西さんは同中学校の校歌からうたい始め、「待ちぼうけ」「赤とんぼ」「Stand Alone」などの曲を歌唱。風船の思い出を元に自身が作詞した「黄色い風船」を初披露し、拍手喝さいとなった。

 羽根さんは風船の運んだ縁を「まさか私の近くの山にかかって素晴らしいご縁を作っていただける結果になるとは夢にも思いませんでした。これを機会に本宮町、熊野全体のことを大西さんに東京に帰って宣伝していただき、また熊野の歌を作ってうたっていただいたら幸いです」と話した。

 生徒からは音楽を勉強しようと思った理由への質問もあり、「好きだったから、だけです」と、大西さん。仕事をやめて32歳の時「今やらないと後悔する」と思い、歌の勉強を始めたことを話した。終盤は生徒と一緒に「君をのせて」を合唱し、豊かなハーモニーを響かせた。アンコールでは「ふるさと」を披露。生徒らは花束を贈呈し、感謝の言葉を伝えた。

 大西さんは終了後「感無量です。まさか熊野でコンサートができるなんて思っていなかった。羽根さんに中学校でもうたってほしいと言っていただけてよかった」と語った。

 翌9日、大西さんは熊野本宮大社で念願の奉納コンサートを行い、アイリッシュハープ奏者の渡辺真位さんと共演した。

大西さん

大西さんに花束を贈呈する本宮中生徒

30年前、風船に付けられた手紙と羽根さんからの返信